tactn001のブログ

大学受験予備校で数学の講師をしております.コメントは,(精力増強剤の宣伝が大量に張り付けられたので) 承認制とさせて頂いております.ご了承ください.

2018年度 神奈川大学 給費生試験の問題と解答

2017年12月23日実施

神奈川大学給費生試験

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理系 Adobe Document Cloud
文系 Adobe Document Cloud


理系問題
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理系解答
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文系 問題と解答
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受験生の出来具合をtwitterでアンケートを取った結果が
こちらです.
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出願状況は↓
www.kanagawa-u.ac.jp
全体で2017年度の7003名から8265名(+18%)と志願者が大幅に増加し,
厳しい試験となりました.

2019年度分(2018年12月23日実施分)は↓
tactn.hatenablog.com


2017年度分(2016年12月23日実施分)は↓(理系のみ)
tactn.hatenablog.com

2017年度 大阪医科大学 前期 第5問 複素数平面

17年 大医 前期の複素は良問でした.以下は,その要旨です.
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複素数平面上の原点Oを中心とする半径1の周上にある
3点A($ a $),B($ b $),C($ c $)を3頂点とする
直角三角形でない三角形ABCを考える.
A,B,Cを原点の周りに$ 2\theta (0<2\theta <\pi )$回転して
得られる点をそれぞれ,D($ d $),E($ e $),F($ f $)とする.
直線BCと直線EFの交点をP($ p $),
直線CAと直線FDの交点をQ($ q $),
直線ABと直線DEの交点をR($ r $)とする.
さらに,$ \lambda=\dfrac{\cos \theta+i\sin \theta}{2\cos\theta }$とおく.
(1) $ p, q, r $を$ a, b, c, \lambda $で表せ.
(2) ある点G($ g $)を中心として,三角形ABCを回転し,
ある一定の比率で拡大または縮小すると三角形PQRに重なることを示し,
このような$ g $を$ \lambda, a, b, c $で表せ.(17 大阪医大・前期(改題))
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元の問題は,前半で図形的な考察をするように洒落た誘導が
ついていましたが,ここでは計算を前面に押し出して解いてみます.

以下,$ w=\cos \theta +i \sin \theta $とする.
このとき,
$ 1+w^2 =1+\cos 2\theta+i \sin 2\theta= (2\cos\theta)w $
が成り立つ.

(1) $ b, c, p $は同一直線上にあるので,$ \dfrac{p-b}{c-b}$は実数である.
ゆえに,$ \overline{ \left( \dfrac{p-b}{c-b} \right) }=\dfrac{p-b}{c-b}$.
ここで,$ |b|=1 $より,$ \bar{b}=\dfrac1b $などが成り立つことに注意すると,
$ \bar{p}=\dfrac1b+\left( \dfrac1c-\dfrac1b \right) \cdot \dfrac{p-b}{c-b}=\dfrac{b+c-p}{bc}.$
同様に,$ e, f, p $は同一直線上にあるので,$ \bar{p}=\dfrac{e+f-p}{ef}=\dfrac{(b+c)w^2-p}{bcw^4}.$
ゆえに,$ \dfrac{b+c-p}{bc}=\dfrac{(b+c)w^2-p}{bcw^4}$から,$ (b+c)w^2(w^2-1)=p(w^2-1)(w^2+1)$
$ w^4\neq 1 $に注意して,
$ p=\dfrac{(b+c)w^2}{w^2+1}=\dfrac{w}{2\cos\theta} (b+c)=\lambda (b+c).$
同様に,$ q=\lambda (c+a), r=\lambda (a+b).$

(2)の前に・・・
三角形PQRが三角形ABCと相似であることは
$ \dfrac{r-p}{q-p}=\cdots =\dfrac{c-a}{b-a}$ ・・・(★)
から比較的容易に確認できる.

では(2).これは(★)と似たような式を作ることを目標にする.
特に(★)から,題意の変換でAがPに,BがQに,CがRに移るものが
存在することが(だいたい)分かる.つまり,
$ \dfrac{p-g}{a-g}=\dfrac{q-g}{b-g}=\dfrac{r-g}{c-g}$
を満たすように$ g $が取れればよい.
ここで,$ (p-g)(b-g)=(a-g)(q-g)$から$ pb-aq=(p+b-a-q)g. $
すなわち,$ \lambda (b-a)(a+b+c)=(1+\lambda )(b-a)g. $
$ a\neq b,\ 1+\lambda \neq 0 $から,$ g=\dfrac{\lambda}{1+\lambda } (a+b+c).$
これは$ \dfrac{q-g}{b-g}=\dfrac{r-g}{c-g}$も満たす.

2017年度 東京慈恵会医科大学 第4問 複素数平面

17慈恵 第4問の複素平面が良問で,質問をたくさん受けるので.

問題文
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複素数平面上の3点A($ \alpha $),B($ \beta $),C($ \gamma $)
は正三角形ABCをなし,$ \alpha \beta \gamma =-1 $をみたしている.
$ \triangle \text{ABC}$の重心D($ \delta $)が実軸上にあり
$ \delta >-1 $であるとき,次の問いに答えよ.ただし,
複素数平面上で複素数$ z $を表す点PをP($ z $)とかく.
(1) $ \triangle \text{ABC}$の外接円の半径$ l $を$ \delta $で表せ.
(2) $ \alpha, \beta, \gamma $を$ \delta $の式でそれぞれ表せ.
ただし,$ -\pi \leqq \arg \alpha \leqq \arg \beta \leqq \arg \gamma \leqq \pi $
とする.
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解法はいろいろありますが,
$$ p^3 - q^3 =(p-q)(p-q \omega )(p-q \omega^2)$$
を利用するのが方向性として見定めやすいように思います.
ただし,$ \omega $は1の虚数立方根です.
以下,偏角の順序の考察は容易なので後回しにして,
取りあえず(1) および 3頂点を表す複素数を求めてみます.
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$ \alpha, \beta, \gamma $の代わりに,3頂点を$ p, q, r $と表す.
すなわち,複素数の集合として$ \{ \alpha, \beta, \gamma \}=\{p, q, r \}$
である.そして,$ p, q, r $は$ \delta $を中心とする半径$ l $の
円周上に,この順に反時計回りに並ぶとする.

(解1) $ p- \delta =z $とおくと,$ q-\delta =z\omega ,\ r-\delta=z\omega^2 $
と表せる.すなわち,
$ p=\delta+z, q=\delta+z\omega, r=\delta +z\omega^2 . $
ゆえに,
$ pqr =(\delta +z )(\delta +z\omega )(\delta+z\omega^2) $
から,$ -1=\delta^3-(-z)^3=\delta^3+z^3 $を得る.
よって,$ l=|z|=\sqrt[3]{\delta^3+1}$

(2) $ \alpha=\delta -l, \beta=\delta -l\omega ,\ \gamma=\delta -l\omega^2 $

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(類題1)複素平面上で,三角形ABCの頂点を表す複素数を$ \alpha, \beta,\gamma $とする.
$ \alpha, \beta, \gamma $が次の3条件を満たすとする.
・三角形ABCは1辺の長さが$ \sqrt3 $の正三角形
・$ \alpha+\beta+\gamma=3 $
・$ \alpha \beta \gamma $は絶対値が1で,虚部は正
(1) $ z=\alpha- 1 $とおいて,$ \beta, \gamma $を$ z $を使って表せ.
(2) $ \alpha, \beta, \gamma $の偏角を求めよ.(99年京都大・前期)
※ 元の問題は偏角に範囲と順序がついていましたが,省略
(解)
(1) $ 1+z\omega , 1+z\omega^2 $
(2) $-\dfrac{2\pi}9 , \dfrac{\pi}{9}, \dfrac{4 \pi}9 $

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(類題2)$ a,\ b $を実数とする.
3次方程式$ x^3+ax^2+bx+1=0 $は3つの複素数からなる
解$ \alpha_1, \alpha_2, \alpha_3 $をもち,
これら3つの解が複素数平面上で1辺の長さが$ \sqrt3 $の正三角形
の頂点となる.このような$ a, b $の組をすべて求めよ.(03年 京都大・後期)

(解) $ (a, b)=(0, 0), (3\sqrt[3]{2}, 3\sqrt[3]{4}) $