tactn001のブログ

大学受験予備校で数学の講師をしております.コメントは,(精力増強剤の宣伝が大量に張り付けられたので) 承認制とさせて頂いております.ご了承ください.

2017入試問題のメモ8(関西地方の国公立大学)

問題は↓(国公立は公開している大学が少ないですが)

過去問題へのリンク(関西地方) - tactn001のブログ

 

(国立大学)

滋賀大学

1(教経)3次方程式が有理数解を持つ条件.やや難しい整数問題

4(デ)回文数の性質($ n+1 \mid n^3+1 $を用いる)

5(デ)二項分布,正規分布

 

滋賀医科大学

例年通り,4題とも味わい深く,そして難しい.入試問題というより,長期休暇の自由研究向け.

1 楕円と折れ線の共有点の個数.y方向に2倍して図形的に判断してもよい

2 速度ベクトル.(3)でコーシーの平均値の定理が登場する

3 $ \cos n\theta $について自力で漸化式を作る

4 さいころ.1が続けて出る確率と,同じ目が続けて出る確率について 

 

京都大学

理系

1 ジューコフスキ変換 2 四面体の切り口

3 $ \tan (\alpha+2\beta)=2 $,整数

4 三角形の内接円の半径のとりうる値の範囲(受験生の出来悪い)

5 面積

6 各桁1~5で$ n $桁の数が3で割り切れる確率.同17海洋大

 

文系

1 3次関数と接線.細かいところでちょっと難しい.

2 桁数と整数.難問かつ良問

5 さいころで出た目の最大値,最小値

 

京都工芸繊維大学

前期

2 $ y=-\log (\sin x)$の弧の長さ 類17岡山県立大

3 複素数三角関数,極限など.数3総合

4 単調数列に関するチェビシェフ不等式 発展バージョンは17熊本大,10東北大(後)

 

後期

3 図形的に考えるとあっけなく終わる複素数

4 やや扱いにくい確率

 

大阪大学

理系

1 双曲線

2 コインを5回投げて確率,複素平面(正五角形)

3 ディオファントス近似.かなり難しい

5 回転放物面と円柱の共通部分の体積

 

文系

1 面積 2 文字消去して最大・最小 3 $ a_{n+1}=8 (a_n)^2 $

 

大阪教育大学

前期

1 $ \{a_n\}$が等差数列 $ \iff $ $ \dfrac1n \sum_{k=1}^{n} a_k $が等差数列 の証明

3 ブラマグプタの定理の証明

 

後期

1 独立性に気を付ける確率

 

神戸大学

前期

理系

1 三角関数の極限.標準的な良問

2 定積分から無限級数

3 四面体から無限等比級数

4 確率とベクトルの融合.状況をうまくつかまないと苦しい

5 トロコイドが結節点を持つ条件.難問.

 

文系

1,2 微積 3 は理系とほぼ共通の確率

 

後期

かなり作業量が多いうえに,4,5は内容も難しい.

数学的には興味深い素材が多く,自由研究向け.

 

奈良教育大学

12次関数 2 場合の数 3命題(座標を使って考える.意外と重量級)

三角関数微積.自然な設定で計算もほどほどの良問.

 

奈良女子大学

前期

1(理)座標,格子点.難しくはないが答が沢山あって大変

3(理) ジューコフスキ変換+回転

6(生) データの分析 $ y_i=a x_i +b $の変換 類17 成城大・経済

後期

1 $ a_{n+1}=3a_n+4n $ ヒント付

3 各位が1 or 2である$ n $桁の数の中に$ 2^n $で割り切れるものが存在することの証明.良問

 

和歌山大学

1 $ \sqrt[3]{\sqrt5+2} -\sqrt[3]{\sqrt5-2}$が整数であることの証明.類17藤田保健衛生大・医

5 斜め楕円の回転

6 サイクロイドのいろいろ.計算量多い.

 

公立大学

滋賀県立大学

前期 1 $ \log_{a} \sqrt{ab} $と$ \log_{\sqrt{ab}} b $の大小比較など

後期1 (3) 等角らせんの長さ 2 $ \sum \dfrac{1}{\sqrt{k}} $の評価 3 円,位置ベクトル

 

京都府立大学

1 $ \cos \dfrac{2n}{17} \pi $のいろいろ.正17角形の作図可能性がネタにあるが,ボリューム満点で自由研究用素材といったところ

2 正三角形に内接する円の列の無限等比級数.頻出かつ品の良い問題

4 複雑な関数方程式.方向性を誤ると巨大迷路

6 円と放物線が「外接」する条件.面積

 

京都府立医科大学

1 正20面体のいろいろ.状況の把握が困難で計算も膨大.

4 ロジスティック写像 (5) $ \epsilon - \delta $が必要と思われ,一般的な受験生には酷

 

大阪市立大学

前期

理系 1 円柱斜め切り.表面積を求めるところは難問

2 三角形の頂点上の移動.4 座標で与えられた三角形の面積の最大.やや難しい

 

文系 1 座標平面上のランダムウォーク.類17東大

 

後期

1 素数定理的な関数の評価

2 $ \cos \dfrac25 \pi $から正五角形の面積

3,4 縮小写像

5 楕円の正射影

6 定積分から無限級数

 

大阪府立大学

前期 3,4 ニュートン法

中期

3 三角関数と領域(面倒)

4 サイコロ$ n $回 目の積が3で割り切れる確率

5 計算の膨大な微積

 

兵庫県立大学

前期 工学部 4 不等式で表された領域の体積

前期 経 1(1) $ n^2-40n+319 $が素数になる条件 3 実数係数の3次方程式が共役解と実数解を持つことの証明

中期理 1 4辺が2,3,3,4円に内接する四角形 5 さいころと無限級数 類90東大

後期経済 1(1) $ y=x^3,\ y=\dfrac{1}{x} $を定義にしたがって微分

2正多面体の展開図(難)

3 正五角形の面積 類17大阪市立大学

4 三角形の面積をニ等分する線分の長さについて(やや難)

 

奈良県立医科大学

前期 90分15問から6問に変化.ただし,易しくなったとは言い難い

3 無限級数の難問 4 斜軸回転の体積 類17順天堂・医,17産業医

後期

1 畳み込みの微分方程式 2 $ Z(\sqrt{2})$の単元

3 円分方程式(知らなければ困難)4 思考力を要する数列

 

和歌山県立医科大学

3 2次方程式が整数解を持つ条件.何となく,17東北大,17滋賀大に似ている

 

2017入試問題メモ7(中部地方)

問題は↓

tactn.hatenablog.com

tactn.hatenablog.com

 

(国立大学)

長岡技術科学大学

1 硬貨を続けて投げて,表や裏が連続したら終わりの確率

4 積分の誘導から$ n^n e^{-n+1} < n! < (n+1)^{n+1} e^{-n}$を示す

 

新潟大学

1 多項定理

 

富山大学

前期

医他 1 逆双曲線関数の極限 2 3次方程式の解の積分

経他 4 $ n $が整数のとき$ f(n)$が整数になる条件など

 

後期

理(数学科)

1(3) $ \vec{a}=(a_1,\ a_2,\ a_3),\ \vec{b}=(b_1,\ b_2,\ b_3)$のなす角を$ \theta $とするとき,$ |\vec{a}| |\vec{b}|\cos\theta =a_1 b_1+a_2 b_2+a_3 b_3 $を示す. 

 

金沢大学

理系 4 ニュートン法

人間 2 フェルマーの小定理 $ p=7 $

後期 2 $ \cos \dfrac{2\pi}9 $の評価 4 コインを投げて表の出た回数を3で割った余りの確率

 

福井大学

医 1 $ x+2y+5z=10n $ 格子点 2 検査の確率 3 サイクロイドの法線 4 球の断面

教 $ \sum [ \log_3 k] $

 

山梨大学

工他 4 $ \sum \dfrac1{e^k+1} <\log 2 $を示す.

教他 1(4) $ x+y+z \geqq \sqrt{xy}+\sqrt{yz}+\sqrt{zx} \geqq \cdots $を示す.

医 2(2) 二項係数 4円錐を切ると放物線

5 $ \dfrac{\cos x \sin 2n x}{\sin x}$の積分 類14東北大

 

信州大学

理経

1 データの分析(共分散) 6 アステロイドの長さ 7 場合分けのある極限

教育

1 $ \sum k^3 $の証明 3 $ \dfrac{\log x}x $の極限

後期

3 放物線と正弦曲線の交点,面積

 

岐阜大学

前期3 $ \pi $の近似 同10大分大・医 4 減衰曲線 7 余りの論証

後期 3 $ 2 \left( \dfrac{m+1}{e} \right)^{m+1} > m! $の証明

 

静岡大学

農他 2 $ \tan A \tan B \tan C=\tan A+\tan B+\tan C $ 類17島根大

4 $ \{ m^2+n^2\ |\ m,\ n \in Z \} $が積について閉じていることの論証

 

浜松医科大学

2 直交2円柱 (3)に共通部分の図示

4 誤謬率の定義を考案し,その意図を述べる

 

愛知教育大学

1 $ 8 \sum (k^5+k^7) =n^4 (n+1)^4 $の証明

5 Pell方程式

9 1の5乗根について

 

豊橋技術科学大学

2 放物線と接線

 

名古屋大学

理系

2 立方体の頂点上のランダムウォーク

3 球の影 (3)は式のみを追ってもできるが,図形的に考えれば早い

4 巡回群

 

文系 3 難しい整数の論証

 

名古屋工業大学

前期

2 外サイクロイド(特にネフロイド)の長さ

3 $ \sum \dfrac1{2^n} \tan \dfrac{\theta}{2^n}$

4 $ 3\alpha^2-6\alpha \beta+4\beta^2 $から三角形を決める

 

後期

1 放物線の法線,軌跡(放物線の平行曲線が放物線と交わる条件)

2 $ \sum \sin \dfrac{\pi}{n+2k}$の極限 類 04京都工芸繊維大(後)

4 四面体と球の共通部分の体積

 

公立大学

富山県立大学

2 不等式 3 $ \dfrac{x^n}{e^x}$の極限 4 $ y=\log x $,接線,体積

 

岐阜薬科大学

1 三角形に内接する円の列

3 $ \log_x y-\log_y x^{\frac12}< -\dfrac12 $の領域

4 $ 2\alpha^2-2\alpha \beta+\beta^2=0 $ 類17 名古屋工業大学

 

愛知県立大学

3 $ e^x x^{n-1} \sin x $の積分 4 $ \left( \dfrac{\alpha}{\beta} \right)^2 =8i $から三角形のいろいろ

 

名古屋市立大学

前 2 連の個数 4 $ 2^{n-1} \cos \dfrac{(n-1)\pi}3 $ 

中 1 $ x^b \log x $の極限 2 カテナリー 3 双六

 

(私立大学)

金沢医科大学

3 楕円

 

金沢工業大学

1(6) $ x-1,\ x+2 $で割った余りを与えて$ (x-1)(x+2)$で割った余り

(8)正四面体のいろいろ

 

愛知医科大学

3 ババ抜き 同95京大

 

愛知学院大学

2/2 歯薬 4(2)抽象的な条件付確率

 

愛知工科大学

全体として基礎的で素直な良問

 

愛知工業大学

1/27 1(7)傘を忘れるA君,条件付確率 (11) 正八面体のv,e,f

 

南山大学

経済B 2/9 $ \displaystyle \int_{x}^{x^2} \log t\ dt $を極大にする$x $

外・経 2/11 1(2)三角形折り紙 (3) ガラスを重ねて光が弱まる常用対数

 

藤田保健衛生大学

1(7) 正20面体の辺の本数 (8) 等面四面体(知らなくても解ける)

 

名城大学

理工 2/2 1(1) 意外に難しい三角比

農 2/2 3 $ y=| x^2 -3x | $と$ y=ax $で囲まれる面積の最小値

理工2/3 $ \displaystyle \lim_{n\to \infty} n \int_0^1 x^n e^x\ dx $ ($ \delta $関数絡み)類13京都産業大

法 2/3 1(3)6冊の本を分ける場合の数のいろいろ

3 3倍角から$ \dfrac{\pi}{5}$,正五角形の内接円と外接円の半径の比

経 2/11 1 円順列

理工B 2/18 $ m^n \leqq n^m\ (2\leqq m<n ) $を満たす整数$ m,\ n $の組

円と正多角形を次々に外接させると

twitterで見つけた問題です.

f:id:tactn:20170821231300j:plain

半径1の円$ C_3 $に外接する正三角形を$ P_3 $とする.

$ P_3 $に外接する円を$ C_4 $とする.

$ C_4 $に外接する正方形を$ P_4 $とする.

$ P_4 $に外接する円を$ C_5 $とする.

$ C_5 $に外接する正五角形を$ P_5 $とする.

・・・

以下同様に,円$ C_n $が定義されたとき,

$ C_n $に外接する正$ n $角形を$ P_n $とする.

さらに,$ P_n $に外接する円を$ C_{n+1}$とする

($ n=3,\ 4,\ 5,\ \cdots $)

 

円$ C_n $の半径を$ r_n\ (n=3,\ 4,\ 5,\ \cdots)$とするとき,

$$ \lim_{n \to \infty} r_n $$

の収束・発散を調べる

 

というものです.

結論は「収束する」であり,その値は$ 8.7000\cdots $

です.

極限値が正確にどうなるかは,現時点では私には分かりません)

「収束する」ことの証明なら,次のような感じで

大学入試レベル(標準よりやや上?)の問題になりそうです.

 

(1) $ \dfrac{r_n}{r_{n+1}} =\cos \dfrac{\pi}n $を導き,次を示せ.

$ r_{n}=\dfrac{1}{\ \cos \dfrac{\pi}3 \cos \dfrac{\pi}4 \cdots \cos \dfrac{\pi}n\ }\ (n=3,\ 4,\ 5,\ \cdots)$

(2) $ x>0 $のとき,$ \cos x >1-\dfrac{x^2}2 $と

$ e^x>1+x $を示せ.

(3) $ 0<x<\dfrac{\pi}4 $のとき,$ \dfrac{1}{\ 1-\dfrac{x^2}2\ }<1+x^2 $と$ \dfrac1{\cos x}<e^{(x^2)}$を示せ.

(4) $ n=4,\ 5,\ 6,\ \cdots $に対して,次の不等式を示せ.

$ \dfrac{1}{4^2} +\dfrac{1}{5^2}+\cdots +\dfrac{1}{n^2} < \dfrac{1}{3\cdot 4}+\dfrac{1}{4\cdot 5}+\cdots +\dfrac{1}{(n-1)n} <\dfrac{1}{3} $

(5) $ r_n<2 e^{\frac{\pi^2}3} $を示せ.

 

ちなみに,$ \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}  a_n $が絶対収束するならば$ (1+a_1)(1+a_2)(1+a_3) \cdots $が収束することはよく知られており,その証明に倣いました.

 

$ 53< 2e^{\frac{\pi^2}3} <54 $なので,かなり粗いです.

もう少し精度を上げたいなと.

 

一番有力なのは

$$ \prod_{n=1}^{\infty} \left(1-\dfrac{a^2}{n^2} \right) = \dfrac{\sin \pi a}{\pi a} $$

$$ \prod_{n=1}^{\infty} \left(1+\dfrac{a^2}{n^2} \right) = \dfrac{e^{\pi a }-e^{- \pi a}}{2\pi a} $$

を用いるものです.

ただし,

$$ \prod_{n=1}^{\infty} a_n =a_1 a_2 a_3\cdots $$

(無限積)です.

 

これらで$ 1-\dfrac{x^2}2 $や$ 1+x^2 $の積の部分を求めるのが一手.

(一般的な高校生のレベルでは難しいかもしれませんが)

 

高校生レベルでは上の(2)(4)を

$ \cos x > 1-\dfrac{8}{\pi^2} x^2\ \left(0<x<\dfrac{\pi}4 \right)$

$ \dfrac1{5^2}+\dfrac{1}{6^2}+\cdots+\dfrac{1}{n^2}<\dfrac{1}4 $

にして,$ \cos \dfrac{\pi}3 \cos \dfrac{\pi}4 =\dfrac{1}{2\sqrt2} $を用いると,

$ r_n <2\sqrt{2} e^2 =20.899 \cdots $

まではできました.

(もっと強い評価式を作れば,さらに改善できます・・・)